よもやま話


【第2回】

オンラインソフト社会の構造改革(中編)
〜初心者とフリーソフト〜

(02/4/13)

きのこの山

 さて前編でも書いたように、フリーソフトというのは、我々のパソコンを、より多機能に、言い方を変えれば、より高性能にしてくれるツールである。これが無料で手に入るというのだから、有効に利用しない手はない。ぼくはパソコンを触るようになってまだ1年くらいの初心者だが、ここまでパソコンを楽しく使ってこられたのは、フリーソフトのおかげだと言っても決して過言ではない。また、インストールやアンインストール、不具合への対処などを通して、自分なりに暗中模索してきた結果、ようやく若葉マークをはずせる位のレベルまで来れたかなと思っている。

 ぼくは、フリーソフトは、入山を禁止していない山に生えている”きのこ”だと思っている。フリーソフトのドキュメントの決まり文句である「自己責任でお使いください。」という一文も、この喩えだとわかりやすい。すなわち、間違って毒キノコを採って食べてしまっても、それは、その人が毒キノコを見分ける能力がなかったせいであって、山の持ち主の責任を問うのは、お門違いだということだ。強引に山の所有者に賠償を求めるようなことをすれば、所有者は、そんなことを言われるくらいならばと入山禁止の措置をとるだろう。フリーソフトで言えば、配布中止に当たる。このような事態になれば、きのこ採りを楽しみにしていた入山者たちが最も割を食うことになる。自分で自分の首を絞めるというやつだ。

 それでは、食べられるきのこを見極める能力のない素人は、どうすればいいのだろうか?山できのこを採ってくるようなことはせずに、店で売られているきのこだけを買って食べるようにするという方法はある。なるほど安全な方法だ。しかし、山できのこ採りをするというのは、なかなか魅力のあるレクリエーションでもあり、ぜひともやってみたいという人もいるだろう。この場合、詳しい人に付き添ってもらって確認しながら採るとか、きのこ図鑑を見て、確実に大丈夫なものだけを採るとかの方法が考えられる。

 フリーソフトの場合も同様で、何の知識もなく使用するのは危険だ。例えば、インストール・アンインストールだけでも色々な”作法”があり、正しく行わないと、そのソフトだけではなく、パソコン全体の調子を悪くしてしまうこともありえる。フリーソフトを使おうとする者は最低限のスキルを要求されるというのは、このようなことを指す。逆に言えば、自分の能力で扱えるようなフリーソフトのみを使いましょうということになる。

”きのこ”じゃなくて”ふぐ”?

 上の項では、フリーソフトを”きのこ”に喩えたが、この喩えには大きな欠陥がある。きのこの場合は、完全に毒キノコと、そうでないきのこに分けられるが、フリーソフトに(少なくても一般に出回っているものでは)、完全な”毒フリーソフト”などは存在しない。(そんなものがあるとすれば、それはもはやフリーソフトではなくウイルスだ。) 慎重な使い方を要求するもので、いわゆる上級者向けと呼ばれるものはあるが、これとて正しい使い方をすれば、非常に有意義な機能を提供してくれる。そういった意味では、フリーソフトは、”ふぐ”に喩えた方が良いだろう。正しく調理すれば高級食材であるが、下手をすれば命取りになる。

レシピつきの”きのこ”?

 きのこと フリーソフトの違いは他にもある。それは、フリーソフトにはReadMe等という名前のドキュメントやヘルプが必ずといって良いほど付属しているということだ。「この”きのこ”は、こういう調理法をすれば安全に食べられますよ。」と1つ1つの”きのこ”にレシピが縛り付けてあるようなものだ。ドキュメントをよく読んで、理解した上で使用すれば、”毒にあたる”危険性は極めて低くなるはずだ。

つらくても、ドキュメントを読もう。

 初心者には、2通りあると思う。向上心のある初心者と、依存心の強い初心者だ。どんな人でも必ず最初は初心者であるから、初心者であることを恥じる必要はない。しかし逆に、「自分は初心者であるから何もわからないのは当たり前で、周りの人たちは、そんな自分に対して優しく説明して欲しい。」という甘えた態度は、厳に戒められなければならない。わからなければ、まず自分で書籍や検索サイトやヘルプなどを調べるクセをつけるべきだ。どうしても他人に教えを請いたければ、周囲のパソコンに詳しく教え好きな知人を探すとか、初心者用の質問コミュニティを利用するとか、金を払ってパソコン教室に通うとかすべきである。

 フリーソフトの場合は、まずドキュメント・ヘルプを熟読することだ。間違っても、「ヘルプを読むくらいなら作者に聞いたほうが早い。」などと考えてはならない。作者は、あなたのインストラクターではないのだ。作者に連絡する場合というのは、それらをよく読んで理解したうえで正しく使っていると思われるのに、うまく作動しない場合や(いわゆるバグ報告)、希望する追加機能や変更などを提案してみる場合に限られると思う。(単にお礼を言いたい場合は別だが。)

 しかしながら、ドキュメント・ヘルプを熟読するというのは、実はなかなか忍耐を要求する作業だったりするのだ。フリーソフトには、ごくごく簡単なReadMeが付属しているものもあれば、非常に労力を割いて作ったと思われる詳しいヘルプが同梱されているものもある。ドキュメントなど読まなくても直感的に操作がわかってしまうようなソフトは理想だが、現実には多機能になればなるほど、ヘルプの必要性は高まる。かといって、あまりにヘルプの分量が多いと、読む前に気持ちが挫折してしまうということもあり、わかりやすく読みやすいヘルプを備えているソフトというのは、プログラムとしての出来が良いのと同じくらい、フリーソフトの価値を高める重要な要素だと思う。

 このサイトを覘いてくれている自称初心者の方は、向上心のある初心者の方だと思うので、上のような状況は十分わかった上で言うのだが、自分の為だと思って、ドキュメント・ヘルプを最初から最後まで読み通して欲しい。こういう努力の繰り返しが、必ず自分自身のスキルアップにつながっていくと確信する。

 しかし、数あるフリーソフトの中には、非常に読みにくいヘルプや、説明のレベルが高く、とても理解できないようなヘルプを持つものもある。もしこのようなフリーソフトに遭遇し、最後まで読み通すことができなかったならば、潔くこのソフトを使うことを断念した方が良い。前にも書いたが、フリーソフトは、同一ジャンルに大量の作品が発表されているため、自分の使いやすいソフトが、他にきっと見つかるはずだ。Vectorなどの大手配給サイトを探しても良いし、個人のサイトでも、素晴らしい紹介サイトが多数ある。某巨大掲示板などのクチコミも役に立つだろうし、オンラインソフト紹介雑誌の寸評などで比較するのも良いだろう。とにかく、自分と馬が合い、十分理解できたソフトを使うことが大切である。逆に言うと、いくら世間の評価が高くても、自分には合わないと思うソフトは、どんどん切り捨てるべきだ。(作者の方の努力を考えると失礼な言い方で申し訳ないが。) 気楽に切り捨てられるというのも、無料というフリーソフトの特質を生かした、長所の1つと言えるのだ。

インストール前に、ドキュメントを読む

 前項で、使用前にドキュメントを読んで使用の可否を判断した方が良いと述べたが、 インストールしてみないとドキュメント・ヘルプが読めないという配布スタイルのソフトも存在する。ほかならぬ「すっきり!!デフラグ」や「いじくるツール」も、ヘルプはEXEファイルの中に含まれて配布されており、EXE実行(=インストール)前には読めない。インストールしてから読んで、気に入らなければアンインストールすれば良いとはいえ、できればインストールする前に読めれば、これに越したことはない。

 この目的にピッタリなのが、Kino氏作のLzText である。このフリーソフトを導入することで、インストール前のEXEファイルを実行することなく、中に収められている、テキストファイルやヘルプファイルを閲覧することができるようになる。同じくLHA/ZIP/CABなどの圧縮ファイルの中身も解凍することなく、覗く事が出来るようになる。

 また、LzTextが作動する為には、UNLHA32.DLL/UNZIP32.DLL/CAB32.DLLが必要であるが、これらの共有ファイルは、多くのフリーソフトで使われることが多いので、できれば導入しておくことをお勧めする。これらを個別にインストールしても良いが、Runan氏作のCL Windowsを使えば一元的に管理できる。LzTextにはVB6.0ランタイムも必要であるが、これのインストールもできるので、超オススメだ。

 これらのフリーソフトに興味を持っていただいた初心者の方には、ぜひともインストールにチャレンジして欲しい。この2つのソフトの設定は多少ややこしいかもしれない。難易度で言うと中の上というところか?超初心者にはやや厳しいかもしれないが、ドキュメントやヘルプを見ながら頑張って見事設定を終えた時には、超初心者の超の字を返上できるくらいには、なっていると思う。(なお実際におやりになる際には、CL Windowsの方からインストールして、VB6.0ランタイム・UNLHA32.DLL・UNZIP32.DLL・CAB32.DLLの導入を図ってから、LzTextをインストール・セットアップしてください。)



さて、ますます説教くさくなってしまった中編であるが、この辺までとしたい。次回後編では、作者とユーザーの関係について、もう少し掘り下げて考えてみたい。

(UiUicy)
【ひぐち氏のコラム】

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第38回:プレゼンテーションが変えるオンラインソフト(01/12/10)

第37回:オンラインソフトユーザーの連帯感(01/12/03)

第36回:Windows XPがオンラインソフトに与える影響(01/11/26)

第35回:Windows XPとオンラインソフトの相性(01/11/19)

第34回:オンラインソフト社会の構造改革(後編)(01/11/12)

第33回:オンラインソフト社会の構造改革(中編)(01/11/05)

第32回:オンラインソフト社会の構造改革(前編)(01/10/29)

第31回:オートアップデートが拓く未来(後編)(01/10/22)

第30回:オートアップデートが拓く未来(前編)(01/10/15)

第29回:フリーソフト開発がもたらす利益(01/10/01)

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第25回:オンラインソフトとサポートの限界(01/08/27)

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第20回:初心者シンドローム(前編)(01/07/23)

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