よもやま話


【第1回】

オンラインソフト社会の構造改革(前編)
〜ひぐち氏のコラムを再考する〜

(02/4/12)

物議をかもした、ひぐち氏のコラム

 2001年に「窓の杜」においては、「ひぐちたかしのオンラインソフトよもやま話」というコラムが連載されていた。(右の一覧表を参照) その中で、第32回から第34回の3回にわたり発表された「オンラインソフトの構造改革」では、オンラインソフト作者の責任のあり方に関して言及し、それが各方面からの反発を買い、大きな話題になったことは記憶に新しい。これが呼び水となり、ひぐち氏の過去の不名誉な行為を暴くといった個人攻撃にまでエスカレートしてしまい、この論文が提起している問題の本質が十分論議されずに終わってしまったと思うのは、ぼくだけだろうか。 

 今このコラムをもう1度読み返してみると、前編では、パソコンが急激に普及し、そのためユーザーの質が大きく変わってしまい、オンラインソフトの世界においても作者とユーザーの関係が5年前とは全く異なってきているということを冷静に分析している。この回の氏の主張に関しては、大きな異論をさしはさむ人は少ないと思う。問題は第33回の中編である。この回では、「総菜屋の惣菜」・「祭りやイベントの無料のまかない料理」・「100円の菓子」などの比喩を用いて、オンラインソフトの作者の責任が決して小さいものではないことを、ほのめかしている。

 このコラムは週1回のペースで発表されたため、ここまで読んできた読者、特にオンラインソフト作者の中には、金銭的弁済をも予想させる論旨に、戸惑い、驚き、立腹し、この時点で猛烈な反発が巻き起こった。これは、もう時効だと思うのでお話しするが、矢吹拓也氏も「窓の杜」からの自作の引き上げを真剣に検討していた。(現在は、矢吹氏と窓の杜の関係はすこぶる良好である。) この流れは、後編の前半部分の「錆びたジャングルジム」の喩えまで続き、一体どんなスゴイ主張を展開するのかと思っていたら、

1.自作ソフトを発表する前にはウイルススキャンをかけよう。
2.ウイルスに感染していることがわかったら、速やかに配布を中止し、そのことを公表しよう。
3.HDDを初期化するような重大なバグが見つかったら、それを修正し、もし修正ができない場合は、配布を中止しよう。

などという、いわば常識とも言える(というか、わざわざコラムにするまでもない)主張にとどまり、真剣に怒っていた人間が逆に拍子抜けしてしまうような結末になってしまった。    

 上記のように何かとお騒がせな、ひぐち氏のコラムであったが、冷静に読み返してみると、もう1度良く考えてみた方が良いのではないかというような問題提起を含んでいることに気が付く。本家INASOFTのサイトでも、「ホンネでGo!」のコーナーで取り上げているし、初心者を対象にしている当サイトでも、初心者が陥りやすいミスを防ぐ意味で、少し触れておいたほうが良いのではないかと思い、「UiUicyのオンラインソフトよもやま話」として、何回かつたない文章を発表していこうと思う。

フリーソフトって何?

 このコーナーでは、オンラインソフトの中でも、フリーソフトに絞って話を進めていこうと思う。

 家庭で趣味に使っているパソコンというのは、少々の誤解を恐れずに定義してしまうと、「多機能・多目的な家電品」だと思う。インターネットを使った情報端末・ワープロ・ゲーム機・CDプレーヤー・年賀状作成・ビデオ編集・辞典など多くの機能を持っている。そして、それらの1つ1つの機能をパソコンに供給しているのが、”ソフト”ということになる。”ソフト”がなければパソコンはただの箱に過ぎないという陳腐な表現は、曲げようのない真実である。

 ”ソフト”は、専門店に行けば、立派な箱に入った高性能なものが簡単に手に入る。しかし、1つ数千円から数万円という商品を次から次へと購入するのは、庶民には無理なことである。また、市販ソフトは多機能すぎて、ある1つの作業をするのに、わざわざ立ち上げるのがはばかられるなどということもあるだろう。(例えば、画像ファイルを半分の大きさに縮小するだけのために、photoshopを立ち上げるとか。) 小回りの効く、単機能でもその機能に関しては市販ソフトにも負けない高性能なソフトが、パソコンを使いこなせるようになってくるにつれ欲しくなってくるものだ。

 そこで、注目されるのが”フリーソフト”である。フリーソフトを使うことで、最小限のコストで、自分のパソコンを、どんどん多機能・多目的にすることができる。また同じ目的を持つソフトでも非常に豊富に数が揃っているため、色々試用して、自分の気に入ったものを選ぶことができる。

 ところで、フリーソフトの定義って何だろう?ぼくも正確なところは知らない。だが多くの人がすぐに思いつくのが、無料のソフト、すなわち許可なく自由にインストールして使用でき、そのことに関して対価を求められないソフトだという定義だと思う。おそらく、その考えに間違いはないし、最もその意味合いが強いとも思う。でも、ちょっと待って欲しい。この考え方はユーザー側からの視点からのフリーソフトの定義で、もう1つ、作者側から見た”フリー”ソフトの定義という考え方をしてみると、フリーソフトの別の側面というか、フリーソフトを取り巻く環境が見えてくると思う。作者からみた”フリーソフト”というのは、『他の誰からも束縛されず、”自由”に開発・改良・配布できるソフト』ということになると思う。この辺のところは大事なところなので、あとで項を改めて詳しく述べたいと思うが、簡単に例を挙げておくと、ユーザーサポートのようなことは作者の義務ではないし、多くのユーザーが希望する追加機能があったとしても、作者が追加したくなければそれまでだし、逆に、多くのユーザーから無駄だと指摘されている機能があるとしても、作者が気に入っていれば、その機能は削除されることはないというようなことだ。つまり、「フリーソフトは作者のもの」という基本概念である。

フリーソフトを使う時のスタンス

 このサイトはINASOFTをサポートするサイトであるからINASOFTのことを書くが、矢吹氏は、ことあるごとに「自作のソフトは自分の趣味でやっていることであるから、ことさら感謝してもらう必要はないし、寄付などもしてもらう必要はない。」という趣旨のことを述べている。ソフトを公開する理由としては、「子供が公園で作った砂場のお城を親に見てもらいたいという感情。」なのだそうだ。ひぐち氏の比喩と違って、言わんとすることが非常に良くわかる。作者の姿勢としては、非常に素晴らしいと思う。

 しかし、ユーザーの立場からすると、この種の作者の気持ちに甘えていたのではいけないとぼくは思う。前項で書いたように、フリーソフトは作者のもので、ユーザーはそれを使わせてもらっていると言う気持ちを常に忘れずにいることが大切だと思う。そういう気持ちを持っていれば、例えば作者にメールするときも、自然と、丁寧な言葉で感謝の1文から書き始めるとかいうことになる。お互いに人間であるから(特にフリーソフトの作者は個人であることが多い)、ささいな言葉の使い方一つで、感情的になることだってありえる。例えばこんなメールを、初対面の作者に送ったとしたらどうだろう。いわゆる1行メールというやつだ。

『すっきり!!デフラグでデフラグしたけど、3時間もかかった。こんな程度ですっきりと言えるの?』

これは、真実かもしれないが、こんなメールを貰ったら誰でも腹が立つだろう。この人に少しでも作者に対する感謝の念があれば、こういう書き方にはならないだろう。何も、こびへつらえと言っているのではない。本来自由な立場にいるフリーソフトの作者に、こちらの意見などを聞いて”もらう”というスタンスを持つことが、ユーザーと作者の円満な関係を保つことにつながるということを強調しておきたいのだ。つまり、最低限の礼節は守ろうということだ。

 ちなみに、私は新潟県に住んでおり、埼玉県在住の矢吹氏に対して、けっして足を向けて寝ないようにしている。(そちらに足を向けると、北枕になってしまい縁起が悪いというのが、本当のところだが。)

と、くだらないオヤジギャグが出たところで、前編は終わろうと思う。ひぐち氏のコラムでは、あまり適切とはいえない比喩が不興を買った。中編では、ぼくなりの比喩を用いて、初心者がフリーソフトをどのように使いこなしていけばよいのかということを考えてみようと思う。

(なお、口調が小生意気なのは、このページがパロディだからです。ご容赦を。)


(UiUicy)
【ひぐち氏のコラム】

最終回:オンラインソフトゆく年くる年(01/12/17)

第38回:プレゼンテーションが変えるオンラインソフト(01/12/10)

第37回:オンラインソフトユーザーの連帯感(01/12/03)

第36回:Windows XPがオンラインソフトに与える影響(01/11/26)

第35回:Windows XPとオンラインソフトの相性(01/11/19)

第34回:オンラインソフト社会の構造改革(後編)(01/11/12)

第33回:オンラインソフト社会の構造改革(中編)(01/11/05)

第32回:オンラインソフト社会の構造改革(前編)(01/10/29)

第31回:オートアップデートが拓く未来(後編)(01/10/22)

第30回:オートアップデートが拓く未来(前編)(01/10/15)

第29回:フリーソフト開発がもたらす利益(01/10/01)

第28回:コラボレーションのススメ(01/09/17)

第27回:ヘルプにヘルプ!(01/09/10)

第26回:ユーザーと作者の“温度差”(01/09/03)

第25回:オンラインソフトとサポートの限界(01/08/27)

第24回:ユーザーインターフェイス考(01/08/20)

第23回:オンラインソフト・フェノメナ(後編)(01/08/13)

第22回:オンラインソフト・フェノメナ(前編)(01/08/06)

第21回:初心者シンドローム(後編)(01/07/30)

第20回:初心者シンドローム(前編)(01/07/23)

第19回:バージョン表記のフシギ(01/07/16)

第18回:当たるもソフト当たらぬもソフト(01/07/09)

第17回:フリーソフト・ビジネス(後編)(01/07/02)

第16回:フリーソフト・ビジネス(前編)(01/06/25)

第15回:個人で楽しむ動画配信(後編)(01/06/18)

第14回:個人で楽しむ動画配信(前編)(01/06/11)

第13回:オンラインソフト浦島太郎(01/06/04)

第12回:ソフト選びにもコツがある!(後編)(01/04/09)

第11回:ソフト選びにもコツがある!(前編)(01/04/02)

第10回:オンラインソフト“のろけ話”(後編)(01/03/26)

第9回:オンラインソフト“のろけ話”(前編)(01/03/19)

第8回:オンラインソフト・ア・ラ・カルト (01/03/12)

第7回:オンラインソフトコミュニティ(01/03/05)

第6回:オンラインソフトの温故知新(後編)(01/02/26)

第5回:オンラインソフトの温故知新(前編)(01/02/19)

第4回:元祖“オンライン”ソフトの活躍(01/02/05)

第3回:オンラインソフト公開の甘いワナ(01/01/29)

第2回:DLLを見直そう(01/01/22)

第1回:3ペイン型ウィンドウはユーザーインターフェイスの終着駅?(01/01/15)

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