【KNOPPIX】を使ったサルベージの方法

概念図

私のサイトには、『XP/2000の起動トラブル』というコーナーがあり、トラブル解決法を紹介してはいるが、実際のところ解決に至らないケースも数多くあると思われる。その原因として、ユーザーの能力が不十分である場合もあるだろうし、もともと素人である我々には解決不可能なほどの重篤なトラブルが起こってしまったという場合もあるだろう。

このようにWindowsが起動しなくなって修復ができない場合でも、我々にはとっておきの手段がある。それはWindowsの再インストールである。ハードウェアのトラブルが関与していない場合には、この方法は100%の成功率を期待できる。

ところが、Windowsの再インストールをすると、トラブル前までに使っていたファイルが消えてしまう。Windowsを上書き再インストールして、従前のファイルを健全に保持できる場合もあるが、新しくインストールしたファイルで上書きされて消えてしまう危険性もあるし、それ以前に上書き再インストールではトラブルの解決にならず、フォーマットしてからの新規OSインストールが必要とされることも多い。またメーカー製PCのユーザーでは、リカバリーディスクしか所持していないケースもありうる。この場合にも、リカバリーによって従前のファイルはまっさらに消えてしまう。

そこで、Windowsの再インストール前に、せめて重要なファイルだけでも、外部のHDD/CD/DVD/MO/FD/USBメモリなどに退避させておきたいという需要が生じる。このような操作をサルベージという。

このページでは、1CD/DVDブートLinuxディストリビューションの【KNOPPIX】を使った、LAN経由のサルベージ方法を紹介する。上に書いたように、外付けのHDDなどの機器を所有している場合は、これから紹介するような面倒な方法を取る必要はない。壊れたPC単独でKNOPPIXを立ち上げ、KNOPPIX上で、外付けHDDなどにコピーしてやればよい。また、(普及度が高くて安価の)USBメモリもKNOPPIXはほとんど認識してくれると思うので、これを用いるのもお薦めの方法だ。しかし、外付けHDDなどを持っていないとか、サルベージしたいファイルがギガバイト単位の大きなもので、手持ちのメディアに入りきらないなどということになると、このページで紹介する、もう1台の別PCにサルベージする方法が有効な手段として浮かび上がってくる。PCを複数所有するユーザー比率は最近ではかなり高いだろうし、その場合には既にブロードバンドルーターなどで、どのPCからもインターネットにつなげられるように環境構築してある可能性が高い。また、もし自分がPC1台しか所有していなくても、友人に借りるなどの方法がとれる。このページで紹介する方法では、ライセンス的な問題が生じないからだ。

この方法の利点は、起動しなくなったPCを分解してHDDを取り出すというような物理的作業が不要なこと、また、コストがほとんどかからない(CD-R代くらい)ことである。また、Linuxの操作に慣れていないWindowsユーザーにとって、実際のサルベージ作業がWindows上の操作でできるのが心強い。【KNOPPIX】は壊れたPCをサーバーとして機能させるためだけに使うから、そちらは最小限の操作で済むからだ。

必要なもの

準備

1.ルーターを介して、壊れたPCと正常なパソコンを、LANケーブルでつなぐ

LAN接続

2.KNOPPIXのCD/DVDの製作

KNOPPIXの日本語公式サイトへ行って、ISOファイルをダウンロードしてくる。それをブランクCD-R/DVD-Rなどにライティングして起動ディスクを作る。ISOファイル(イメージファイル)の焼き方を知らない初心者は、自分の使っているライティングソフトのヘルプでやり方を調べること。またはGoogleなどで検索すること。それさえもできない人は、書店へ行って、KNOPPIXが付録に付いている雑誌などを買ってくる。

ディスクが出来上がったら、壊れたPCで起動テストをしてみる。(BIOSでCDドライブがHDDよりも起動順位で優先になっていることが必要) 正常ならば、下図のようなデスクトップが表示される。(画面はKNOPPIX4.0CD版のもの。)

KNOPPIX起動初期画面

次に、デスクトップのHard Diskアイコンをシングルクリックしてみる。環境によってアイコンが複数あることもあるので、その場合は全てのHard Diskアイコンをクリックしてみる。

HDDのアイコン

この操作で、下図のようにHDDの中身が表示されれば、このページで解説する方法でサルベージが可能である。もし、アプローチできなかったり、最初からデスクトップにHDDのアイコンが存在しない場合には、このページの方法ではサルベージ不可能なタイプの損傷が起こってしまったと考えられるので、あきらめて素直に別な方法(市販サルベージソフトを使うとか、専門業者に依頼するとか)を模索する。

HDDの中身の表示

3.正常に機能するパソコンに、【WinSCP】をインストールする

インストールの方法などは、こちらのサイトを参照。そのほかにも、Googleで"WinSCP"で検索すると、分かりやすい解説サイトがいくらでも見つかる。英語のフリーソフトだが、日本語化も可能である。

実際の手順

1.壊れたPCを、【KNOPPIX】で起動する。そして、上でやったように、全てのHard Diskアイコンを1度はクリックして Konqueror(Windowsのexplorerに相当するもの)を起動し、×で閉じておく。

2.【KNOPPIX】の最下段の、コンソールアイコン(モニターの絵柄のもの)をクリック。

コンソールのアイコン

3.表示された画面で、ifconfig と入力してEnterする。(ipconfigではない!!) すると、下図のように、このPCにルーターがDHCP機能で割り振ったIPアドレスが表示されるので、メモに控えておく。その後、×でコンソール窓を閉じておく。

ifconfig で確認

4.左下の「K」のアイコンから、図のようにして、[KNOPPIX]→[Services]→[Start SSH Server] とめぐって、選択する。この辺は、Windowsの操作と全く共通。

Start SSH Server

5.すると下図のような画面になるので、パスワードを入力する。何でも好きな言葉で良いが英小文字が無難だろう。(私は"abc"にした。) このパスワードは、Windows側からアプローチする時に使うので記憶しておくこと。2度、同じパスワードを入力し、Enterキーで設定完了。自然に窓が閉じる。壊れたPCでの操作は、これですべて終了である。すべてのサルベージ作業が終了するまで、このままの状態にしておく。 (ちなみにサルベージ作業が全て終了したら、上図の「ログアウト」を選んでシャットダウン)

パスワード入力

6.正常なPCの前に移動し、いつもどおりにWindowsを起動する。

7.Windowsが起動したら、【WinSCP】を起動。下のような画面になるので、必要項目を入力して「ログイン」。

ログイン画面

8.警告が出ても、「はい」をクリック。

警告

9.FTPクライアントソフトのような、左右ペインの画面が出る。左ペインがローカル、すなわち正常な方。右ペインが壊れている方。右ペインで、フォルダの階層を上下して、HDD内の階層に移動する。

WInSCP起動画面

mnt

hda1

10.右ペインに、壊れたPCのHDD内のファイルが表示された。(階層が合っているのに、ファイルなどが表示されない時は、ペイン内で右クリックして更新を選ぶと見えるようになる。また、KNOPPIXのPCに戻って、デスクトップのHard diskアイコンにアプローチしなおすのも有効。) 左ペインもここまでと同様の操作で、退避用に使うフォルダに移動しておく。あとは実際にこの画面上で、退避したいファイルを右から左へドラッグ&ドロップすれば、ファイルを(直感的に)サルベージできる。

D&D

11.ところで、デフォルト設定ではドラッグ&ドロップするたびに、いちいち確認ダイアログが出るので煩わしい。図のように「詳細」画面にして、図の位置にチェックをつけてから「コピー」を押すと、次回からダイアログが出なくなる。(もしも設定を戻したい時は、ツールバーの設定アイコンから可能。)

確認ダイアログ消去法

まとめ

ここの掲示板では、サルベージ関連の話題になると、KNOPPIXでsamba を使う方法を紹介してきたが、今回紹介した方法のほうが、Windowsを使い慣れているユーザーには取り組みやすいと思う。

市販サルベージソフトには機能的にとてもかなわないが、もしKNOPPIXでファイルが見えるのであれば、コストが掛からないという点でこの方法はとても素晴らしいと思う。まず最初に試してみる方法として、KNOPPIXは適している。

まだ起動トラブルが起こっていない方でも、ぜひ1度、このページの内容を実践してみると良いと思う。そうすれば、いざと言う時に慌てなくて済む。また、サルベージうんぬんということとは全く関係なく、KNOPPIXそのものも、結構色々なことができて楽しいので、1枚ディスクを作って使ってみることをお薦めする。


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