Visual C++ 2005 Express Edition について

2005年12月、Microsoft社が、Visual Studio 2005 Express を公開しました。MicrosoftのExpressのページから、だれでも無料でダウンロードできます。(VB/VC/VC#など言語別パッケージになっています。)ただしダウンロードできる期間は1年間限定です。一旦ダウンロードして入手したものは期間限定無しで使用できるので、興味のある方は、今のうちにダウンロードしておきましょう。

このページでは、C言語初学者がWisdomsoftさんで勉強できるように、ネイティブな実行ファイルを作れるような環境構築を説明していきます。できるだけ最小限の物だけをインストールする方法にしていますので、他の物が必要な方は各自カスタマイズしてください。

1.インストール方法

*重要

Express Beta版をインストールしてあるPCでは、インストールしてある全てのBeta関連ソフト(.NET Framework 2.0 Beta・SQL・MSDNライブラリ・C#などの他の言語製品を含みます)をアンインストールしておいてください。
Beta版とは共存できません。Visual Studio 2003などや.NET Framework 1.1などとは共存できます。詳しくは公式サイトをご覧下さい。

まず、VC++ 2005 Express のインストール用ファイルを入手するために、MicrosoftのExpressのページから、Visual C++のページに行きます。そのページで【CDイメージのダウンロード】というリンクをクリックして、拡張子isoのイメージファイルをローカルに保存してください。isoファイルからインストールする方法は、公式ページに詳しい解説が載っていますが、一応代表的なやり方を以下にあげておきます。

  1. isoファイルを展開して、中身のsetup.exeを実行する方法

    isoファイルを展開するソフトには、公式ページで紹介してある【IsoBuster】のほかに、【WinRAR】、【Super ウルトラISO】などがあります。
  2. isoファイルを、CD-R(W)に焼き、それを使ってインストールする方法。

    isoファイルの焼き方を知らない人は、よく調べてから行ってください。焼き方を間違えて、CD-R(W)に1個だけisoファイルが出来上がったなどということにならないように。
  3. 仮想CDソフトを使ってisoファイルをマウントし、そこからインストールする。

    フリーで使える仮想CDソフトには【Daemon Tool】があります。Version4.00以降の物で、はアドウェアをインストールしないように注意してください。

以下、インストール時の注意点のみ図解していきます。

○インストールするものの選択画面では、グラフィック IDE のみチェックします。MSDNというのはヘルプドキュメントです。必要な方はインストールしてください。SQL Server は、その種の開発が必要な方のみどうぞ。かなりPC環境を改変するので、不必要な人は入れないほうが良いです。

インストールオプション

○インストールするフォルダを指定します。特別な理由がなければ標準のままでよいでしょう。

インストール先フォルダの指定

○インストールは、.NET Framework 2.0 からインストールされ、その後 VC++がインストールされていきます。全て自動的に行われ、ユーザーが操作する必要はありません。(C#など他のEXpress 2005 を先にインストール済みのPCでは、.NET Framework 2.0 は既にインストールされているので、直接VC++のインストールから始まります。そのことも含めて、インストーラーが必要なものを自分で判断して全自動で行ってくれます。)

セットアップの進行状態

2.Platform SDK のインストール

Visual C++ Express には、Win32 APIを学習するためのファイル群が添付されていません。そこで、Platform SDKをインストールしておく必要があります。
第3章の3を参照

(従来のバージョンも含めて)Platform SDK インストール済みの方は、この作業は不要です。

3.使用前の設定

Platform SDK を使えるようにする

VC++ ExpressからPlatform SDKを使うためには、設定でパスを通しておかねばなりません。VC++ 2005 Express を起動し、メニューのツール→オプションを選びます。

オプション

以下のようなダイアログが表示されます。プロジェクトおよびソリューションVC++ディレクトリという項目で、右端のドロップダウンで実行可能ファイルを選びます。

オプション(VC++ディレクトリ)

その状態で、下図のボタンをクリック。

参照...ボタン

図の位置に…マークのボタンが出現するのでクリック。

…マークのボタン

セーブ用のダイアログが開くので、C:\Program Files\Microsoft Platform SDK\Bin を指定します。これは標準状態のパスなので、違う場所にインストールしてある人は、各自の環境に合わせてPSDKのBinフォルダを指定してください。

Binフォルダの指定

同じやり方で、それぞれインクルードファイル・ライブラリファイルにおいても、以下のようにPSDKの該当パスを追加します。

インクルードファイル

ライブラリファイル

標準でリンクするLibに、kernel32.lib 以外のものも追加しておく

Win32 GUI アプリを作る際に、標準設定のままでは以下のように kernel32.lib のみがリンクされます。

追加のlib(kernel32.libのみ)

これでは不便なので、もう少し多くのlibファイルを標準でリンクするように設定しておきましょう。こうしておくと、新規プロジェクトを作った段階ですでに下の図のようになっていて便利です。

lib追加

この設定は次のようにします。
C:\Program Files\Microsoft Visual Studio 8\VC\VCProjectDefaults\corewin_express.vsprops をテキストエディタで開き、
AdditionalDependencies="kernel32.lib"

AdditionalDependencies="kernel32.lib user32.lib gdi32.lib winspool.lib comdlg32.lib advapi32.lib shell32.lib ole32.lib oleaut32.lib uuid.lib"
に変更します。他に入れておきたいものがあれば、各自お好きなようにカスタマイズしてください。

新規プロジェクトのウィザードに、WIN32APIアプリ用のアイコンを表示させる

標準状態では、下図のように、プロジェクトの新規作成のウィザードにおいて、コンソールアプリしか選択できません。

コンソールのみ

そこで、下図のようにWin32APIアプリ用のアイコンを追加しましょう。

Win32API用アイコン

このやり方は、C:\Program Files\Microsoft Visual Studio 8\VC\Express\VCProjects にある Win32Console.vsz をコピーして Win32Wiz.vsz という名前に変更し、コピー元と同じフォルダに置いておきます。そのファイルをテキストエディタで開いて
Param="CONSOLE_TYPE_ONLY = true"
という行の true を false に変更します。
アイコンは MC++WinApp.ico をコピーして Win32Wiz.ico という名前に変更し、これもコピー元と同じフォルダに置いておきます。

新規プロジェクトのウィザードで、Windows アプリケーション/DLL を選べるようにする

標準状態では下図のように、2つの項目が選択不可能になっています。

グレーアウト

そこで、下図のように、【Windows アプリケーション】と【DLL】を選べるようにしておきましょう。

グレーアウト解除

この方法は、C:\Program Files\Microsoft Visual Studio 8\VC\VCWizards\AppWiz\Generic\Application\html\1041\Appsettings.htm をテキストエディタで開き、
WIN_APP.disabled = true;
WIN_APP_LABEL.disabled = true;
DLL_APP.disabled = true;
DLL_APP_LABEL.disabled = true;
という連続する4行を検索し、消去するか、行頭に//をつけてコメントアウトします。

4.実際に使ってみよう (ネイティブGUIアプリケーションの一例)

それでは、実際に使ってみましょう。ここでは、基本的なウィンドウを作るWin32 アプリをサンプルにします。

  1. メニューの [ファイル|新規作成|プロジェクト...] をクリックします。
    プロジェクト新規作成
  2. プロジェクトの種類欄はWin32、テンプレート欄ではWin32 プロジェクトを選びます。赤く囲った欄に任意のプロジェクト名を入力します。自動的に緑の欄にも入力されます。最後に [OK]をクリック。
    プロジェクト名設定
  3. 下の画面では[次へ] ボタンをクリックします。
    概要
  4. 以下のような画面になります。「Windows アプリケーション」を選び、「空のプロジェクト」にチェックして[完了] します。
    アプリケーションの設定
  5. 下図のようにして、空っぽのソースファイルをプロジェクトに追加します。
    ソースファイル追加
  6. 名前をつけて保存するダイアログが出ます。拡張子をcにすれば、C言語として扱われます。標準はcppでC++です。いまはWisdomsoftさんのサンプルがCなので拡張子をcにしました。
    保存画面
  7. 今回はVC++2005 Express の作動テストなので、付属のエディタにWisdomsoftさんのサンプルソースを貼り付けます。もちろん普通は自分で書くわけです。
    ソースを貼り付ける
  8. ソースが完成したら ビルドします。経過は出力欄に表示されます。
    ビルド...
    結果表示
  9. エラーがなければ、EXEファイルが出来上がります。実行してみましょう。
    実行

うまくいきましたか?たとえば、ここにメニューを付け加えたければ、リソースファイルを追加するわけです。Expressにリソースエディタは付属しませんが、テキスト形式で扱うことはできます。また、他のソフトのリソースエディタで先にRCファイルを作っておいて、そのファイルをプロジェクトに加えても良いでしょう。

5.最後に

「無料だから、Visual C++だから」という理由で、全くの初学者が最初の学習環境として、VC++ 2005 Express を選ぶのはあまりお勧めできません。Borland C++ Compiler の代わりにコレを使ってCの勉強を始めようと考えている方がいたら、ぜひ思いとどまって、まず【C言語を始めよう】や【BC pad】を試してみてください。

しかし、ある程度の実力がついたら、統合開発環境が欲しくなると思います。その場合、これを使用してみるのも良いと思います。コード補完機能などを生かして、より効率的にプログラムを作成できるツールとして使えるでしょう。できるだけPCの環境をいじられないようにしながら Visual C++ の雰囲気を味わう方法として、このページの内容を役立てていただければ幸いです。


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