それでは、どんな感じでブータブルCDを作っていくのか、実際に1回やってみよう。まだ具体的なことは何も説明していないのだが、手順をお見せして、実際にあなたにも真似してやっていただいて、全体的な作業のイメージをつかんでもらいたい。
【CD Shell】の公式サイトへ行って、"CD Shell Binaries" をダウンロードしてくる。これは、いわゆるアプリケーションではなく、ブータブルCDを作るために必要なファイル群の詰め合わせだと考えたほうが良い。本来はこれを取捨選択し、一部カスタマイズして使うのだが、今回は初めてなので、何も考えず"丸ごと"このまま使ってしまおう。
私がこのページを書いているときのバージョンはV2.1.6であり、zipファイルで提供されている。これを展開しておこう。以下のような構成になる。
cds ├ boot │ ├ fonts │ │ └ ( 12 個のファイル ) │ ├ graphics │ │ └ ( 2 個のファイル ) │ ├ keymaps │ │ └ ( 33 個のファイル ) │ ├ modules │ │ ├ isolinux │ │ │ └ ( 2 個のファイル ) │ │ ├ memtest │ │ │ └ ( 1 個のファイル ) │ │ ├ rpm │ │ │ └ ( 1 個のファイル ) │ │ └ ( 12 個のファイル ) │ ├ scripts │ │ ├ chooser │ │ │ └ ( 3 個のファイル ) │ │ ├ cputype │ │ │ └ ( 5 個のファイル ) │ │ ├ doctorxp │ │ │ └ ( 7 個のファイル ) │ │ │ _dblmenu.cds,_menu.cds,cdmenu.txt,dblblue.cds,example.cds, │ │ │ green.cds,silver.cds │ │ ├ password │ │ │ └ ( 1 個のファイル ) │ │ └ ( 3 個のファイル ) │ └ ( 4 個のファイル ) │ cdsh.bin,cdshell.ini,cdshw.com,loader.bin ├ licenses │ ├ CD Shell │ │ └ ( 1 個のファイル ) │ ├ cpuType │ │ └ ( 1 個のファイル ) │ ├ diskemu │ │ └ ( 1 個のファイル ) │ ├ isolinux │ │ └ ( 2 個のファイル ) │ ├ memtest │ │ └ ( 1 個のファイル ) │ └ Ranish │ └ ( 1 個のファイル ) ├ tools │ ├ convert │ │ └ ( 2 個のファイル ) │ ├ syntax │ │ ├ editplus │ │ │ └ ( 2 個のファイル ) │ │ └ textpad │ │ └ ( 1 個のファイル ) │ └ ( 1 個のファイル ) └ ( 1 個のファイル )
ブータブルCDを作るソフトはいろいろあるが、設定の多彩さと、書き込み時にドライブを選ばない汎用性から、多くの人たちに愛されているソフトがCDRtools と呼ばれるキットだ。しかし、これをコマンドラインから使うには、長ったらしいオプションを打ち込む気力と知識が必要だ。そこで、ウィザードに沿って設定していくことで自然と複雑な設定を完了できるフロントエンドソフトが発表されている。【CDRecord フロントエンド】だ。
公式サイトから【CDRecord フロントエンド本体】と【CDRtoolsバイナリ】の2つのzipファイルをダウンロードし、それぞれ解凍してから、同一フォルダ内に全てのファイルを一緒に配する。
このソフトを使うと、便利なだけでなく、設定の意味するところが画面に表示されるので、CDRtoolsの教科書としても役に立つ。また、ある程度の知識がある人にとっても、選択肢にマウスをあわせるとツールチップが実際のコマンドラインオプションを表示する点や、最後の画面で手書きでオプションを修正できる点がウレシイ。初心者から上級者まで使いやすいように配慮されているソフトだと思う。
*この作業は、今後ブータブルCDの作成のたびに、繰り返し行うことになる。
【CDRecord フロントエンド】を起動し、「フォルダ構造からISOイメージを構築する」を選ぶ。
第1画面 | ![]() |
第2画面では、「ブータブルにする」にチェックしておくのを忘れずに。
第2画面 | ![]() |
第3画面では、今回は特に設定はいらない。
第3画面 | ![]() |
第4画面。「ISOイメージの構築元ディレクトリ」は、必要なフォルダ・ファイルを含む親フォルダを指定する。【CD Shell】の場合は、bootフォルダの1階層上のフォルダを指定する。ここで指定したフォルダ自体(今の例ではcdsフォルダ)は完成したISOイメージには含まれないことに注意。完成したISOではルートにbootフォルダなどが置かれる構成になるわけだ。ブータブルCDにとって、この階層構造は非常に重要で、1階層ズレるようなことがあると(ISOイメージのルートにcdsフォルダがあって、その下にbootフォルダがあるような構成など)、たちまちブートしなくなるので、慎重に設定することが必要だ。
「El Torito準拠ブートイメージ」では、CD Shell のブートローダーである、loader.binを指定する。このファイルはbootフォルダ内に存在する。
下の2つにもチェック。下のほうはなくても良いが、上のほうは必須。
第4画面 | ![]() |
第5画面では、-1のままにしておいても問題ないが、一応CD Shell のマニュアルに沿ってロードセクタ数を4にしておこう。
第5画面 | ![]() |
第6画面は、このままでOK。
第6画面 | ![]() |
第7画面もそのまま。
第7画面 | ![]() |
第8画面は、お好みでどうぞ。空欄のままでも可。
第8画面 | ![]() |
第9画面では、出力先のファイル名を指定しておく。指定した場所に指定したファイル名でISOイメージファイルが出来上がる。その他は空欄のままで良い。
第9画面 | ![]() |
第10画面では、「構築」ボタンをクリックすれば良いのだが、「実行コマンドの表示に切り替え」を選ぶと…。
第10画面 | ![]() |
このように、具体的なオプションが表示される。上級者は最初からこれを直接打ち込むわけだが、その面倒くささとタイプミスの可能性を考えると、フロントエンドソフトのありがたさを感じる。また、この窓の中は直接編集が可能なので、ここで追加したいオプションがあれば、手書きで修正できる。「構築」ボタンをクリック。
第11画面 | ![]() |
コマンドプロンプトが開き、ISOイメージが作成される。
仮想PCを使って、完成させたISOイメージファイルから起動テストをしてみる。(例えば、QEMUならば、前回【UBCD】のイメージファイルを指定した欄で、代わりに完成させたISOイメージファイルを指定する。) 正しく作成できていれば、以下のような画面になる。
マウスも使えるメニュー画面になっている。ここから、更にいろいろなプログラムを呼び出していくことができるわけだ。これがマルチブータブルCDである。
この章では、なぜブートするのかなどは深く考えずに、あつらえられたフォルダ・ファイルをそのままブータブルCDに変換することを体験した。
これを喩えると、レトルトカレーを使ってカレーライスを作れるようになったくらいのレベルだ。目標は、市販のカレールウを使ってカレーライスが作れるようになることだ。(小麦粉とカレー粉でカレーを作ろうというレベルまでは考えていない。)
【CDRecord フロントエンド】(実際はmkisofs.exe)を使って、用意したフォルダ構造をブータブルCDのISOイメージに変換する作業は、レトルトカレーをお湯で温める作業に相当する。難しいのはカレーを温めることではなくて、カレーの中身を作ることだというのは、ブータブルCDの場合も同じである。ブータブルCDを作る作業は、適切なフォルダ・ファイル構成を作る作業が中心になる。材料であるフォルダ・ファイル構成が正しく作られていなければ、どのような温めかたをしても、決して正しく機能するブータブルCDにはならないのだ。
この章でサンプルとして使った【CD Shell】の構成について、ほんの少し解説しておくと、loader.bin がブートローダーで、cdshell.ini がその設定ファイル。今回のcdshell.ini には、「example.cds という設定ファイルの存在を確認し、そのファイルを読みに行け」とだけ書かれている。example.cds には具体的な設定が記載されている。今の段階で、これ以上のことを理解する必要はない。