第17章 番外編 【Acronis TrueImage】でリカバリDVDを作る

この章で取り扱う、TrueImageのブータブルレスキューメディアと復元用バックアップファイル(拡張子がTIBのファイル)を1枚のDVDにまとめてしまうというテクニックは、TrueImage9.0 Build3764 にて、アプリケーション本体の機能として標準搭載された。したがって、これ以降のバージョンをお使いの方は、そちらの機能を使ったほうが簡単である。詳しいことは、製品マニュアルを参照のこと。

【Acronis TrueImage】について

第6章で、AcronisのTrueImageやDisk Director Suiteなど複数のレスキューCDをマルチ化する方法を簡単に紹介した。この章では、TrueImageのブータブルレスキューメディアに復元用バックアップファイル(以下TIBファイルと呼ぶ)を収めて、1枚のDVDにまとめる方法を紹介する。

TrueImageのブータブルレスキューメディアは、OSが起動不可能になった時に、このディスクを使ってPCを起動し、あらかじめ作っておいたTIBファイルを指定して、正常だったときの状態に復元する機能を持っている。このときのTIBファイルは、普通は外付HDDないし別の内蔵HDDなどに保存しておく。しかしDVD±R(W)などにTIBファイルを保存しておいて、たとえDVDドライブが1台しかない環境であっても、ブータブルレスキューメディアと途中でディスクをチェンジすることで、復元作業を行うことも可能なのである。これは、ブータブルレスキューメディアでTrueImageを起動すると、そのプログラム全体がメモリにロードされる仕組みになっているためで、その後にブータブルレスキューメディアを取り出してもプログラムの実行に支障がないからである。したがって、この章で取り上げるようにややこしい手段を経て、ブータブルレスキュープログラムとTIBファイルを1枚のDVDにわざわざまとめる必要は、本来は全くないのである。

しかし一部の人たちは、この『1枚化』にこだわっており、2ちゃんねるのTrueImageスレッドでも何度となく話題として登場している。確かに、OSを新規インストールし、周辺機器のドライバを整え、自分好みのアプリケーションをインストールして、ようやく自分にとってのスタンダードな環境を構築した時の状態をTrueImageでバックアップしておき、その状態にいつでも1枚のDVDだけで戻せるマイリカバリDVDが作れれば、それはとても魅力的なことなのだろうと思う。

2ちゃんねるのTrueImageスレッドでは、この方法のテンプレとして、【SuperウルトラISO】を使う方法を紹介している。私が【SuperウルトラISO】大好き人間なのは、このサイトを一覧していただければお分かりいただけると思うが、今回の場合は多少賛成しかねる。それは、今回扱うネタでは、【SuperウルトラISO】体験版で「作成できるISOが300MB以内」という制限に引っかかり、製品版を購入する必要があることが理由のひとつだ。また環境によっては、【SuperウルトラISO】で作ったDVDでいざ復元しようとすると、含めておいたTIBファイルが壊れているとか、フルバックアップファイルなのに差分ファイルだと誤認するエラーメッセージが出てしまうことも、お勧めしない理由である。特に後者は深刻な問題で、おそらくISO9660ファイルシステムの仕様などに関係があるのではないのかと思う。この問題を回避するためには、同一DVD内のファイル情報を正しく認識させるための何らかの工夫が必要になる。(おそらくISO-UDFブリッジ化で多くの環境で成功するようになるのではないかと私は予想している。) 【SuperウルトラISO】にも高度な設定というのがあって、ある程度のカスタマイズはできるのだが、無料で使えるmkisofs(【CDRecord フロントエンド】の本体)のほうがカスタマイズに関しては、はるかに豊富なオプションを持っている。上手くいかない時に色々試行錯誤する余地があるということだ。とにかく、無料でできるということは、作製方法を紹介するうえで大きな要因になると考えているので、このページを作ってみた。

ディスクアットワンスではなく、TIBファイルを追記していくという方法で成功する場合もあるらしいが、この方法は、より一層環境を選ぶと考えられる。おそらくほとんどの環境で上手くいかないのではないかと思う。

この章は番外編なので、初心者お断りの他の章と異なり、ほんの少し想定読者のレベルを下げて、ステップ・バイ・ステップで丁寧に解説していこうと思う。

TIBファイルの作成

上にも書いたように、自分にとって基準となる環境ができたなら、TrueImageでフルバックアップをとる。このとき、基準環境にTrueImageがインストールされているのであればWindows上でバックアップを取ればよいし、基準環境にはTrueImageがインストールされていないのであれば、TrueImage製品CDないしブータブルレスキューメディアから起動したTrueImageでフルバックアップをとればよい。TIBファイルは、一旦どこかのHDDに保存しておく。

なお、今回の場合、ブータブルプログラムとTIBファイルを1枚のDVDに収める必要があるので、出来上がったTIBファイルのサイズに注意すること。1層DVDならば4.7GBに収めなければ、この章でやろうとしてることの意味がなくなってしまう。

ここで作成したTIBファイルは、このあとmkisofs(CDRecordフロントエンドの本体)を使ってISOファイルに含められるが、mkisofsには、中身のファイルは1ファイルあたり最大4GBまでという制限が存在するようだ。(完成品のISOのサイズが4GBまでということではない!) したがって、もしTIBファイルのサイズが4GBを超えるようならば、TrueImageの設定で4GB未満の複数のファイルに分割して出力することが必要である。

もうひとつ、つまらない悪影響が出ないように、ファイル名はできるだけ簡単なものにしておいたほうが良い。1.tib とか c.tib などのようなものが望ましい。少なくても8.3形式に合わないものや、2バイト文字を含む名前は避けたほうが無難である。(2006_01_20.tib とか 基準点.tib などのような名前はダメ)

なお、このあとの動作テストで使うので、このTIBファイルを単独でDVD±RWに焼いたものを1枚作っておく。ライティングソフトでデータ焼きしておけばよい。

【Acronis TrueImage】のブータブルレスキューイメージファイルを作る

TrueImage9.0 Build3764以降は、ブータブルレスキューメディアを作成する際に、(直接CD/DVDに焼くのではなく)ISOイメージファイルとして保存することも可能になっているので、この項の内容は不要。

第6章でも書いたが、今回はブートローダーにBCDWを使うので、【Acronis TrueImage】のブータブルレスキューメディアをイメージ化したファイルを作る必要がある。

とりあえずは、通法どおりCD版ブータブルレスキューメディアを作成する。CD-RWを使うのが良いと思う。この作業が終わったら初期化して別の用途に使えるからだ。もちろんCD-R1枚の値段なんか気にしないという方はCD-Rでも良い。【Acronis TrueImage】のユーザーでブータブルレスキューメディアの作り方を知らない人はいないと思うが、一応書いておくと、スタートメニュー経由で【ブータブル メディア ビルダ】を起動して、あとはウィザードの指示に従うだけだ。また、新規インストールやアップデートの時点で、レスキューメディアを作るかどうか訊かれるので、このときに作っても良い。CD-RWは新品かあらかじめ初期化したものを用意しておく。(CD-RWの場合だと以前にパケットライト用にフォーマットしてあったりするかもしれないので、そういう場合にはパケットライトのフォーマットを解消して初期化しておくのを忘れずに。)

さて、CD-RWを無事ブータブルレスキューメディアにすることができたならば、実際に使えるかどうかテストしてみる。ブータブルレスキューメディアでTrueImageを起動し、前の段落で作っておいたTIBファイルを単独で焼いておいたDVD±RWに入れ替える。TrueImageがこのTIBファイルを正しく認識し、復元できることが必要だ。この動作テストがうまくいかないようだと、今後『1枚化』しても成功は望めないだろう。

動作テストが成功したら、いよいよブータブルレスキューメディアCD-RWをイメージファイル化しよう。いわゆるリッピング作業だ。自分の使い慣れたソフトがあれば、それを使えばよい。ただし、生成ファイルがひとつにまとまるソフトが良い。bin+cueとかccd+imgとかのように2つ以上のファイルになるものは適さない。フリーソフトならば、このコーナーの主要使用ソフトである【CDRecord フロントエンド】を使っても良い。最初の画面で下図のように「ディスクからイメージを構築する」を選んで、以下ウィザードに従えばよい。

CDRecord フロントエンド

【SuperウルトラISO】体験版を使うのならば、メニューのツール→イメージファイルの作成...から標準ISO を選んでおいて作成する。

SuperウルトラISO

DVDドライブにバンドルされていることが多い【B's Recorder Gold】 を使うのならば、メニューのメディア→リッピング...から作成していく。拡張子はimgになるが問題はない。

B's Recorder Gold

とにかく使用するソフトは何でも良いので、ブータブルレスキューメディアCD-RWをひとつのイメージファイルに変換する。ただし保存する時に、ファイル名は8.3形式に則ったものが望ましいという点は、TIBファイルの場合と変わらない。ti.iso のような名前が良いだろう。

BCDWの調整とフォルダ構築

ブートローダーとして、【Bootble CD Wizard】V2.0a1 を入手しよう。これは、【CD Shell】の公式サイトのDownload ページのUser contribuions のコーナーに行き、ダウンロードしてローカルに保存する。

ローカルに保存したbcdw-2.0a1.zip を解凍すると、その中にbcdw という名前のサブフォルダがある。そのフォルダだけ中身ごとコピーして、空のフォルダを新規作成して(名前をxとしておく)、その中に貼り付ける。その後、bcdw2dosというサブフォルダは不要なので削除する。ここまでの作業で、以下のような構成が出来上がるはずだ。BCDW関連ファイルで使用するのはこれだけだ。残りは削除してよい。

x
└ bcdw
   └( 3 個のファイル )                                                      
      bcdw.bin,bcdw.ini,loader.bin

bcdw というフォルダ名および3つのファイル名は決して変更してはならない

次に、前の段落までで用意しておいた、TIBファイルと、ブータブルレスキューメディアをリッピングしたイメージファイルを、xフォルダに移動する。今回の例では、1.tib と ti.iso という名前にしてある。

x
├ bcdw
│ ├ bcdw.bin
│ ├ bcdw.ini
│ └ loader.bin
├ 1.tib
└ ti.iso

ここまで出来たら、bcdw.ini というファイルをテキストエディタで開き、すべて中身を一旦消去してから、以下のように書き換えて上書き保存する。

[MenuItems]
C:\                  ; Boot from drive C:
\ti.iso              ; Acronis TruImage
:PowerOff            ; Power Off

これで準備完了だ。

ブータブルDVDイメージの作成

ここまでの作業で作ってきたxフォルダ以下の構成をブータブルDVDイメージファイルに変換する。使用するソフトは【CDRecord フロントエンド】である。以下、順次画面の通りに入力していって欲しい。気をつけるところは赤く印を付けてある。なお、以下の例では(上の段落で作った)xフォルダは、Dドライブのルートにあることを想定している。これ(4つ目の画面の「ISOイメージの構築元ディレクトリ」)に関しては、各自の環境でのxフォルダのパスを指定する。 また、9つ目の画面の「ISOイメージの出力先」も任意の場所で良い。なお、【CDRecord フロントエンド】の普遍的な解説は第4章を参照して欲しい。

タスクの選択
ファイル名規則・対応環境の設定
ISO互換性オプションの設定
構築元ディレクトリ・ブートの設定
ブータブルの詳細設定
ファイルとフォルダの設定
HFS/Rockridgeの設定
ID設定
ファイル出力設定
10 確認と構築画面

以上の操作によって、この例では、Dドライブのルートにrescue.iso という名のイメージファイルが出来上がる。

イメージファイルをDVD±R(W)にライティング

あとは、完成したイメージファイル(rescue.iso)を、DVD±R(W)に焼くだけだ。いつもご自分が使い慣れたソフトで良いと思う。ただし、イメージファイルとして焼くことをお間違いなく。ISOをそのままファイルとして焼いてしまうようなことがないように。

適切なライティングソフトを持っていない人は、上で使った【CDRecord フロントエンド】でもできる。最初の画面で「ディスクイメージをメディアに書き込む」を選べばよい。ただし【CDRecord フロントエンド】はDVDライティングに関しては、最適とは言いがたいように感じる。もし、「フリーソフトで何が良いか?」と問われれば、英語ソフトだが【DVD Decrypter】の後継の【ImgBurn】を推薦する。

実際の使用法

完成したDVDをドライブに入れ、PCを起動する。BIOSでHDDよりもDVDドライブの起動順位を優先しておくことは言うまでもない。まず以下のような画面になるので、Acronis TrueImageをキーボードの下矢印キーで選択し、Enterキーを押す。

ブート選択画面

しばらく待たされた後、TrueImageが起動する。イメージの復元を選ぶ。

イメージの復元

CDドライブ(実際はDVDドライブ)の中にTIBファイルが見つかるはずだ。これを指定して、その後の操作に進めばよい。

TIBファイルの指定画面

もしもTIBファイルが正しく認識されないようであれば、【CDRecord フロントエンド】を使った作成画面の2・3に戻って、設定オプションを色々変えてみて、上手くいく設定を探し出す。

以上のやり方で、1枚のDVD±RWにレスキュープログラムとTIBファイルを収める事が出来る。"My Recovery DVD"の完成だ。

参考:製品版【SuperウルトラISO】による方法

2ちゃんねるのテンプレに載っている方法も簡単に紹介しておく。手順はグッと簡潔になる。

1.Windowsが起動した状態で、ブータブルレスキューメディアCD-R(W)をドライブに入れる。

2.【SuperウルトラISO】を起動し、メニューの「ツール」→「イメージファイルの作成...」から標準ISO を選んで、ISOファイルを作成する。(参考図

3.「ファイル」→「開く...」で、2で作成したイメージを開く。

4.「操作」→「ファイルを追加...」で、あらかじめ作成しておいたTIBファイルを追加する。

5.「ファイル」→「高度な設定...」で下図のように設定して、OKする。

UDFを指定

6.「ファイル」→「名前をつけて保存...」でISOファイルとして保存する。
   (Neroがインストールしてある環境では、「ツール」→「イメージの書き込み...」で直接DVD±R(W)に書き込んでも良い。)

7.完成したISOファイルを、ライティングソフトを使ってDVD±R(W)に、ISO焼きする。

5でUDFを指定するところは、2ちゃんねるのテンプレにはないが、こうすることで、今まで失敗していた人たちのいくらかは、成功するようになると思う。

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