第15章 複数のWindows NT系インストールディスクの組み込み

I386フォルダの重複

前章でも述べたように、Windows NT系のインストールCDは、I386 というフォルダを持っている。インストールに必要なファイルはほとんど全て、このフォルダ内に含まれているという重要なフォルダだ。2種類のNT系インストールCDを統合し、1枚のマルチブータブルCDにしようとした時に、このフォルダの競合問題が大きく立ちはだかってくる。

試してもらえば分かるが、前章のようなリネーム法(I386→I387などのようにフォルダ名を変更する方法)では、インストールの途中でエラーが出る。仮に、徹底的にバイナリエディタやテキストエディタで「I386」という部分を探し出し、すべてのファイルでリネームすれば成功するのかもしれないが、それではインストールされたHDD上のWindows までも、I386フォルダや関連レジストリなどがリネームされてしまうだろうと予想される。I386 という名前はWindows が作動するための重要な名前なので、OSを使用していく上での、Windows Update とか、新たなサービスパックの導入とか、システムに関わるアプリケーションのインストールとかの場面で、必ず支障が出ると思う。

そこで、前章で紹介したもうひとつの方法、すなわち、サブフォルダを作りその中にI386 フォルダをそのまま移動することによってバッティングを避ける方法をとらねばならない。

この章では、Windows 2000 とWindows XP の統合インストールCD作成法を例にして解説する。両方のOSともサブフォルダに移動しても良いが、少しでも手間を減らすため、Win XP のみサブフォルダを作ってそこにずらすことにする。Win 2K の部分に関しては、そのままの階層にしておく。要は、I386 フォルダがバッティングしなければ良いのだ。もしも3つのNT系を統合したければ、3つのうち2つを、サブフォルダを作ってずらせば良いのだ。

これから具体的なやり方を説明していくが、とにかく手順が多くて面倒だ。個人的には、ここまでして統合する必要があるのかとも思うが、技術的好奇心もあるので紹介している。1階層ずらすとこんなに大変なのかということを理解するうえでも意味があるかもしれない。とりあえず「ずらすOSは1個でも少ないほうがラクだ。」ということだけは、声を大にして申し上げておく。

準備

まず最初に、第12章の方法で、Win2K を【Bootable CD Wizard】に組み込んでおく。Win 2K のI386フォルダはxフォルダ直下、すなわちブータブルCDになった時にはルートになる位置に置かれるわけだ。これならば、Win 2K に関して言えば、インストール時の階層問題は考慮しなくて良い。

2番目に、Win XP のI386 フォルダの受け皿になるためのサブフォルダを、xフォルダ直下に作る。今回はWXPP という名前にした。名前は何でも良いが、半角英数字で4文字にしておく。

3番目に、Win XP の階層を1つずらすにあたって必要になるファイル群を、WXPP フォルダ内に配置する。とりあえずこれをセットアップファイル群と名づけておく。セットアップファイル群の正体は、Windows XP の6枚組みの起動フロッピーに含まれる全ファイルだ。この作業は以下のような手順で行う。

◎Windows XP の場合の、セットアップファイル群の準備

1.マイクロソフトのサイトから、自分のOSのEdition、言語、サービスパックのバージョンに合ったフロッピーブート インストール用セットアップディスク作製用のプログラムをダウンロードして、ローカルに保存する。今回は、Win XP Pro SP2 の例で説明する。

2.1でダウンロードしたEXEファイルを解凍ソフトで解凍する。すると下図のようなファイルが出てくる。この中で2つのEXEファイルは不要なので削除する。

cdboot1〜6.img

(注)解凍ソフトによっては解凍できないかもしれない。その場合は以下の手順で上のファイルを取り出す。

  1. フォルダオプションで隠しファイル・隠しフォルダが表示されるようにしておく。
  2. ダウンロードしたEXEファイルを実行。
  3. 使用許諾契約に同意。
  4. コマンドプロンプトが表示されたら、その状態のまま、エクスプローラで [OSがインストールされているドライブ名]:\Documents and Settings\[ユーザー名]\Local Settings\Tempを開く。
    (9X上で作る場合は [OSがインストールされているドライブ名]:\windows\Tempを開く。)
  5. 4のサブフォルダ内に上図のファイルがあるはず。cdboot1.img〜cdboot6.imgの6つのファイルをコピーして、どこか別のフォルダ内に貼り付けておく。
  6. コマンドプロンプトに戻り、Ctrlキー + Cキー で終了する。
  7. 1での設定(フォルダオプション)を元に戻す。

3.【Super ウルトラ ISO】を起動。[ファイル|開く...]をクリック。

開く...

4.ダイアログが開くので、先程のcdboot1.imgを選択して[開く]。

イメージファイルを開く

5.【Super ウルトラ ISO】の右上のペインにcdboot1.imgの中身が表示される。[操作|抽出...]をクリック。この操作でcdboot1.img内に含まれるファイルを全部外に取り出そうとしているのだ。

抽出...

6.xフォルダ内に作成しておいたWXPP フォルダを指定して、[OK]をクリック。

フォルダの参照

7.下の確認ダイアログが開くので、[はい]をクリック。これによって実際にWXPP フォルダ内に抽出したファイルがすべて書き込まる。

確認ダイアログ

8.ここまでの3〜7までの作業を、cdboot2.img〜cdboot6.imgに関しても繰り返す。この作業を行うことにより、通常は6枚のフロッピーディスクに分散して含まれる全てのファイルとsystem32フォルダを、WXPP フォルダ1箇所の中に集めることができる。

(参考) Win NT/2K の場合

◎Win 2K でのセットアップファイル群は、オリジナルインストールCD の中の、BOOTDISK フォルダ内のファイルを使う。

◎Win NT でのセットアップファイル群は、オリジナルインストールCD の中の、I386 フォルダにあるWINNT.EXE を /OX オプションで実行する。

最後に、第12章でも出てきた、Windows NT系では必ず存在しなければならないファイルを、xフォルダ直下に置いておく。必要なものは、オリジナルインストールCDの中にあるはずだ。

Windows のバージョン 必要なファイル
2003 Enterprise WIN51 and WIN51IA
2003 Standard WIN51 and WIN51IS
2003 Web WIN51 and WIN51IB
XP Home WIN51 and WIN51IC
XP Professional WIN51 and WIN51IP
2000 Professional CDROM_NT.5 and CDROM_IP.5
2000 Server CDROM_NT.5 and CDROM_IS.5
2000 Advanced Server CDROM_NT.5 and CDROM_IA.5
2000 Datacenter Server CDROM_NT.5 and CDROM_ID.5
NT Workstation CDROM_W.40
NT Server CDROM_S.40
NT Terminal Server CDROM_TS.40

同じく、各サービスパックによって必要な以下のファイルも、xフォルダ直下に置いておく。

サービスパック 必要なファイル
XP Home Service Pack 1 WIN51IC.SP1
XP Home Service Pack 2 WIN51IC.SP2
XP Professional Service Pack 1 WIN51IP.SP1
XP Professional Service Pack 2 WIN51IP.SP2
2000 Service Pack 1 CDROM_SP.TST
2000 Service Pack 2 CDROMSP2.TST
2000 Service Pack 3 CDROMSP3.TST
2000 Service Pack 4 CDROMSP4.TST

ここでは便宜上これらのファイルを、識別ファイルと呼んでおく。

I386 フォルダの挿入と、その他の設定

もしも単独でWin XP を【Bootable CD Wizard】に組み込むとしたら、下図のようになる。

XP シングルブートの場合の概念図

しかし今回は、WXPP フォルダの中に、(XP 由来の)I386 フォルダを丸ごと入れなければならない。本来の位置には、2K 由来のI386 フォルダが既に存在しているからである。

また、識別ファイルも、WXPP フォルダにコピーしておく。移動ではなくコピーだということに注意する。すなわち、2階層に渡って同一ファイルがダブって存在することになる。

そして、セットアップファイル群は、上記操作によって既にWXPP フォルダ内に存在している。

以上のことから下図のような構成になる。今後は、この図を見ながら読んで欲しい。視覚的に『○色の領域』という言い方で説明していく。

XP マルチブート用の構成図
(図が見にくくなるので記載していないが、緑色の領域にはWin 2K 由来のI386 フォルダがあるし、Win 2K のための識別ファイルもある。)

相当ややこしくなってきたので混乱してきたかもしれないが、更に必要な設定が3つある。

1.txtsetup.sif に関する設定

黄色の領域にtxtsetup.si_ という名前のファイルがあると思う。これをまず削除する。次に、赤い領域のtxtsetup.sif という名のファイルを黄色の領域にコピーする。そしてその黄色の領域のtxtsetup.sif をテキストエディタで開き、
SetupSourcePath = "\"
という部分を検索し、
SetupSourcePath = "\WXPP\"
に変更して、上書き保存しておく。

2.bootfont.bin に関する設定

黄色の領域にbootfont.bin というファイルがある。これを、ONT.BIN にリネームする。名前の最初の5文字を消し、大文字化しておくということだ。

3.setupldr.bin に関する設定

黄色の領域にsetupldr.bin という名のファイルがある。これをバイナリエディタで開き、BOOTFONT.BIN という文字列を検索する。見つけたら、WXPP\ONT.BIN に書き換える。

書き換え前のsetupldr.bin

書き換え後のsetupldr.bin

【Bootable CD Wizard】の設定と、ISO変換

いよいよフォルダ・ファイル構成の構築が完成した。

あとは【Bootable CD Wizard】の設定だ。bcdw.ini を以下のようにしておく。

[MenuItems]
C:\                        ; Boot from drive C:
\I386\setupldr.bin         ; Win 2K Setup
\WXPP\setupldr.bin         ; Win XP Setup
:PowerOff                  ; Power Off

あとはいつもどおり、【CDRecord フロントエンド】を使って、ISO ファイルを作成する。

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