Windows XP/2000 のインストールCDは、[No Emulation]タイプと言われるブート方式になっている。今まで出てきた中で挙げれば、【Bootable CD Wizard】や【CD Shell】などが[No Emuleation]タイプである。第10章で紹介したWindows Me は同じWindows のブータブルCDでも、[Floppy Emulation]タイプだ。
突然、[〜Emulation]などと言われても分かりにくいだろうと思う。
[Floppy Emulation]と言うのは、フロッピーディスクのブート形式を模倣してブータブルにしたものだ。具体的な実例は、私の本家サイトの「CD-R版緊急起動ディスク」にある。これを一読してもらったほうが、ここで理屈を並べ立てるよりも理解しやすいと思う。
そのほかに、HDDを模倣した[HDD Emulation]もある。パーティションを1つだけ持つHDDからの起動を模倣したものだ。
そして、他の機器を模倣していないブートプログラムを使うのが、[No Emulation]タイプだ。これは、「1CDブートの回復コンソール」のコーナーに実例がある。読んでもらえば分かるが、そこでは、【Bart's PE Builder】の作者さんのサイトから入手したw2ksect.bin というブートローダーを使用している。
上記のw2ksect.bin はWindows XP のインストールCDのブートセクタ(2048バイト)を、そっくりそのままファイルにしたものである。確かめるには第2章でやったEl Torito 方式で、Windows XP インストールCDのブートセクタを探し、バイナリをw2ksect.bin と比べてみればよい。あるいは【Super ウルトラISO】の「ディスクからブートファイルを抽出」機能を使って、Windows XP インストールCDから抜き出したファイルをw2ksect.bin と比べてみればよい。全く同一のものであることが確認できるはずだ。
【WinImage】のときにも同じようなことを書いたが、Bart さん、MSの許可はもらってあるんでしょうね。まあ、Bart さんの所だけではなく、他のマルチブートローダーの配布元でも、名前は違いこそすれ、同じものをダウンロードできる状態にしているので、MSの著作物と言うことでもないのかも知れない。
Windows XP/2000 のインストールCDを【Bootable CD Wizard】に組み込むためには、第7章でやったように、適切なブートローダーファイルを見つけ、そこにチェーンロードしてやれば良い。
上で書いたように、オリジナルのXP/2000 インストールCDには[No Emulate]タイプのブートセクタがあり、それはI386サブフォルダに存在するsetupldr.bin を呼び出してブートしていく仕組みになっている。よって、【Bootable CD Wizard】からsetupldr.bin をチェーンロードしてやれば、上手く組み込むことが出来る。。
【Bootable CD Wizard】はとても優秀なマルチローダーである。その1つの要因が、チェーンロードの際の自由度が高いと言うことだ。たとえば【CD Shell】では64KB以上のファイルに対して直接チェーンロードすることが出来ないという制限事項がある。setupldr.bin は200KB以上あるから、もろにこの制限に引っかかる。解決策としては、前述のw2ksect.bin に相当するものをあらかじめ抜き出しておいて、それを介してsetupldr.bin に繋げるような手順を踏まなくてはならないので、とても煩わしい。その点【Bootable CD Wizard】ならば、直接setupldr.bin を呼び出すだけで良い。
いつもどおりに、【Bootable CD Wizard】の基本構成のxフォルダに、インストールCDの中身をコピーする。以下のような構成になる。bcdwフォルダとI386フォルダが同じ階層になるように配置する。
x ├ bcdw │ ├ bcdw.bin │ ├ bcdw.ini │ └ loader.bin ├ I386(この下に多数のフォルダ・ファイル群) ├ 複数のその他のフォルダ群 └ 複数のその他のファイル群
その他のファイル群の中には、Windows NT系では必ず存在しなければならないファイルがあるので、取りこぼしのないようにしたい。以下のようなファイルだ。
Windows のバージョン | 必要なファイル |
---|---|
2003 Enterprise | WIN51 and WIN51IA |
2003 Standard | WIN51 and WIN51IS |
2003 Web | WIN51 and WIN51IB |
XP Home | WIN51 and WIN51IC |
XP Professional | WIN51 and WIN51IP |
2000 Professional | CDROM_NT.5 and CDROM_IP.5 |
2000 Server | CDROM_NT.5 and CDROM_IS.5 |
2000 Advanced Server | CDROM_NT.5 and CDROM_IA.5 |
2000 Datacenter Server | CDROM_NT.5 and CDROM_ID.5 |
NT Workstation | CDROM_W.40 |
NT Server | CDROM_S.40 |
NT Terminal Server | CDROM_TS.40 |
同じく、各サービスパックによって、以下のようなファイルも必要になる。
サービスパック | 必要なファイル |
---|---|
XP Home Service Pack 1 | WIN51IC.SP1 |
XP Home Service Pack 2 | WIN51IC.SP2 |
XP Professional Service Pack 1 | WIN51IP.SP1 |
XP Professional Service Pack 2 | WIN51IP.SP2 |
2000 Service Pack 1 | CDROM_SP.TST |
2000 Service Pack 2 | CDROMSP2.TST |
2000 Service Pack 3 | CDROMSP3.TST |
2000 Service Pack 4 | CDROMSP4.TST |
以上の表中のファイルは、xフォルダの中に直接置かれていなければならない。すなわち、ブータブルCDに焼いた時はルートに置かれていなければならないということだ。
bcdw.ini は以下のようにしておく。
[MenuItems]
C:\ ; Boot from drive C:
\I386\setupldr.bin ; Windows XP Setup
:PowerOff ; Power Off
あとは【CDRecord フロントエンド】でISOファイルを作成すればよい。